戦後問題は未だ終わらず(残留日本人問題)

まだ、日本と中国の国交が正常化されてそんなに時間が経過していない
ころ、それでも今ほど、日本人が中国国内を自由に歩き回る事は出来なか
った。渡航に関しても、結構査証の申請が面倒でもあった。
行く先々で制限もあった。
しかし、ましてや中国の人が日本に渡航するのはそれよりも遥かに難しい
事でもあった。

国交正常化後、本格的に中国残留孤児の調査が開始され、次々と身元が判
明し、今まで離れ離れだった肉親同士が抱き合う姿を見て、涙が込み上げ
てきた事をよく覚えている。

ひとりの日本人として、実は中国の人に感謝のような気持ちになっている
事がこの残留日本人を我が子のように育ててくれたという事だ。
戦争の混乱で、日本人が我が子を中国で捨てるも、その時多くの中国人が、
本来は敵国人であり、もしかしたら自分の愛する人を殺したかもしれない人
の子供を、実の我が子の様に育てたという事に、今でも深い感銘を覚える。

そういえば、NHKスペシャルドラマの「大地の子」もそんな話しだった
ですよね。主人公が幼少のときに、中国人の育ての親が色々煩ったのか、
ある穴倉に主人公を置き去りにした。一旦捨てたものの、子供が泣き出し、
結局涙を一杯に流しながら再び子供を拾い上げ、「申し訳無い!」と言いな
がら抱きしめた。
その時、本当に自分も涙が止まらなくなった。

既報、今日、一人の残留日本人が、60数年ぶりに故郷の日本に一時帰国す
るそうだ。同姓同名の人が日本にいた事で身元確認に時間がかかり、日本、
中国両国政府の調査で、残留日本人である事が認知され、ようやっとの帰国
となった。本人は、日本への永住帰国は望まないが、自分の戸籍を回復し、
肉親と会うことを楽しみにしているそうだ。
近くて遠い国だったという事を改めて認識させられた。

中国の市場開放政策のおかげで、我々も自由に中国に行く事が出来、最近で
は短期間ならばビザ無しで渡航できるようになった程です。それが故に、未
だある「戦後処理問題」であるところの残留日本人の問題が、あるという事
を充分に認知し、二度とこうした悲劇を起こさないためにも両国が共に
歩んでいかなければいけないという事を痛感させられる。