遅れ馳せながらアッパレ高橋尚子

実は、屈辱の2年前の東京国際女子マラソンは、高橋尚子の応援のために水道橋
飯田橋の間にあるトヨタ自動車ビルの前で、主催者から配られた緑のハンカチ
を振りながら待ち構えていた。
実際に見る、我らがQちゃんはスラーッと背が高く、足の筋肉はまさにサラブ
レッド。世界に名だたるアスリートの身体はまさに芸術品といっても過言ではな
いだろう。ラジオの文化放送の実況を聞きながら、20数分時点にはQちゃんは
トップを走っている事を告げていた。そして、警視庁交通機動隊の白バイの先導
を受け、テレビ中継車、審判車両をしたがえ、飯田橋交差点からQちゃんがこっ
ちに近づいてきた。僕の目の前を通るQちゃんはまさに電光石火の如く一瞬のう
ちに駆け抜ける。ただ、速いの一言だった。Qちゃんが舞い起こした風を感じた
ような気がした。その姿はとても美しかった。
後続に一般市民ランナーが走る。しかし、歴然とQちゃんとまったく身体のつく
りが違うのだ!しかしその2時間程あとに、四ッ谷に上る坂道でQちゃんは抜か
されるという事は知る由も無かった。

本当は日曜はQちゃんの応援に行きたかったのだが、今年はテレビでの応援と
なった。以前住んでいた後楽園近く。飯田橋、水道橋、神保町、、、、かつての
見慣れた道をQちゃんは走る。
白山通り神保町と水道橋の丁度ど真ん中でしょう。
Qちゃんは、ギアをシフトアップし、ターボ全開、ニトロ燃料でも注入したので
はないかと思うほどの走りに変わった。

下世話な話でスマソ・・・
むかしJRAの岡部幸雄という騎手が、スプリングステークスで名馬マテリアル
号に騎乗した時、本来なら追い込み馬なはずのマテリアルを中山のバックストレートで岡部が何故かムチをいれ逃げ切ってゴール板を先頭で駆け抜けた時の事
とクロスオーバーした。あの時マテリアルはゴール直後骨折をし、予後不良処分
となった事も同時に思い出した。あのレースはマテリアル復活にして、マテリア
ル最期のレースだったのだ。

爆弾を抱えるQちゃんにとって、白山通りでの賭けは、選手生命を終わらせてし
まう事にはなりかねないかと。まさにアスリートの足は得てしてガラスの足なの
だ。岡部騎乗のマテリアルのあの悲劇と、脳裏で交錯した。

しかし、Qちゃんはそんな不安を一切払拭し、2年前の屈辱の坂も難無く上り詰
め、外苑東通りを経由して競技場のトラックへ戻って来た。
そしてローレルの冠が彼女の頭に。
そのあとのQちゃんのスピーチに感動した。色々悩んでいる人に向けてがんばっ
てくださいと励ましてくれた。今の僕にとって彼女のあのスピーチは心にジンと
染みた。本当に美しい女性の姿を目の当たりにした。
本当にQちゃんありがとうという気持ちになった。
日本、いや世界の多くの人が彼女に共鳴したと思う。久しぶりにすがすがしい気
持ちになった。強いものは美しいのだ。